先日実家に帰った時に、どうしても捨てられなくて残してある本を、
久しぶりに眺めていて・・・1冊連れて帰って来てしまいました。
パトレーバー、攻殻機動隊、うる星やつら映画版などで有名な、
押井守監督が映画化した「スカイクロラ」の原作です。
あぁ、櫻田が頭の中で描いていたクサナギさんは攻殻機動隊のクサナギさんに近かったし、
カンナミはもう少し細くて神経質な暗い顔をしているはずだったのに・・・
となりがちなので、愛する本が映画化するのは苦しいものですね。
でも、音とか空気感の設定は、想像を越えて素晴らしく感動しました。
と、映画のことは置いといて、原作を。
★
未来なんだか過去なんだか分からない、戦争がビジネスとして行われる世界。
「キルドレ」と呼ばれる永遠に生きる人間「カンナミ」の語りで物語は進みます。
優秀な戦闘機パイロットとして働いている「カンナミ」と、
同じくキルドレである女性上司「クサナギ」との関係を軸に展開するのだけれど、
ねっとりとした心理描写ではなく、淡々とした会話や客観的で冷めた描写が、
ゆったりと、でも、静かなドミノのようにカタカタと続いて行きます。
静物画のような情景描写から、少しずつそれぞれの感情がはみ出て来て、
戸惑い、疑問、開放、ためらい、衝突・・・そして導火線に火をつけるヤツがいて、
最終章へとドミノが倒れ込んで行く様は、さすが森先生的軽快で緻密な展開。
実戦パイロットという職業柄、常に「死」と隣り合わせで、
そしてキルドレという寿命のない人間という設定からも、
「死」ということが繰り返し語られるのだけれど、息苦しさはありません。
★
不思議な透明感のある世界で、風が止まっているような、
不気味なくらい穏やかな空気が流れている。
こう、心の温度はあまり感じられない中で、心の機微が描かれていて、
それは、大好きなEdward Hopperの絵のようで、
カポーティの静かで不思議な、ちょっとファンタジーな短編のようで、
(と言っても、もう、10年くらい読んでないので、どんなだったけな・・・)
詩的で絵的で、とにかく、どこまでも美しく澄んでいる、大人のファンタジー小説です。
あぁ・・・な結末ですが、それでも後味はすっきり爽やか。
その世界観にずっと留まっていたくて、何度も読んでしまう本。
日常から自分を切り離して、ふわっとファンタジーの世界へ。
★
なお、森先生の緻密な展開や、謎解き的な部分は、
5巻全てを読むことで堪能できます。そう、シリーズなのです。
特に、結末であるスカイ・クロラが最初に発行されており!?
経緯や背景が分からない、あまり説明されないまま進んでいるので、
続編を読み進むにつれ「あぁ、そういうことだったんだ!」の連発です。
物語の時系列ではこの順番だけれど、発行順は番号の通り。
ほぼリアルタイムで購入したので、スカイクロラから読みました。
②『ナ・バ・テア』
③『ダウン・ツ・ヘヴン』
④『フラッタ・リンツ・ライフ』
⑤『クレィドゥ・ザ・スカイ』
①『スカイ・クロラ』
Wikipediaなど読むと、あらすじ分かります。
#イクリプスは番外編的
#偶然後ろにカポーティが!