北根室ランチウェイを女一人で歩く7★養老牛温泉〜モアン山を不安と共に歩く

記事には広告が含まれています

これまでは大した距離を歩いていませんでしたが、一日で30km歩き、北海道に歩きにきたぞ!的喜び(&疲労)に満たされる時がやって参りました。

この道でいいのかな・・・不安を抱えながらアップダウン激しい山の中をひとり歩き続けた先には・・・←大した展開はないのに、余韻を残してどうにか最後まで読んでもらおうとしている。

・北根室ランチウェイを女一人で歩く
1★北海道東にある71.4kmの歩道を歩きたい!

2★民宿地平線は親戚の家のようなあたたかさで
3★民宿地平線〜開陽台の先
4★佐伯農場到着!
5★ずっといたかった佐伯農場
6★佐伯農場〜養老牛温泉

今回はえんじ色の「2」の区間の、養老牛温泉〜先までを歩きます。今回歩いたルートの中で、最もアップダウンが激しくハードでした。

kitanemuro_ranch_way_mymap

今回の記事でレポしたルートです。距離としては6kmほどです。 番号は写真の番号に対応していますが、かなり適当にマッピングしているので、その点ご了承下さい。

kitanemuro_ranch_way_map4

さて、人と沢山すれ違った養老牛温泉からは、しばらく車道の脇のコンクリートの上を歩きます。車も少しは通りますが、もちろん歩く人はいません。


kitanemuro_ranch_way110

どこまで歩くんだろう・・・と思いつつ歩いていると、お馴染みのえんじ色の案内板があり、左に曲がれとの指示。ようやくアスファルトから離れ、自然の中に突っ込んで行きます。


kitanemuro_ranch_way61

アスファルトを振り返りつつ、この道でいいんだよね・・・いいのかなぁ・・・。

「本当にこの方向で良いのかなぁ・・・。」という不安と共に、来た道を振り返る。

kitanemuro_ranch_way60

人生もそんな感じじゃないですか?

とか、段々人生論とか考え始めます。孤独は人をにわかか哲学者とか、ポエマーにします。危険。

山の中を少し下るような感じで、不安な気持ちを抱えつつ歩いて行く・・・と、突然温泉が出現。

からまつの湯「いい旅、いい風呂、いい仲間」 心がゆるみます。


kitanemuro_ranch_way62

ちょっと覗いたら何人かいい湯だな♪されているようでした。混浴で、もちろん男性しかいないようです。

ここは乱入するぐらいの気概が必要だったと、悔やまれます。

そんな温泉の前に、軽ワゴンで北海道をまわっているというマッサージ屋さんが、キャンピングテーブルと椅子を出してくつろいでいて、軽く身の上話をしたり、ぼーっとしたり。

ここはいったいどこで、私は何をしてるんだろう・・・誰も私のことを知らないここでは、過去と未来から切り離されたように感じ、自分が誰でもない気がして来る。時がまどろんでいて、時間が緩んでいきます。一秒一秒が、いつもよりとても長い。

そんなふうに不思議な感覚に身を委ねていると、いつも前に前にと焦っている脳みそも、いいあんばいで落ち着いていきます。

なんで自分っていつも先を急いじゃうんだろう。どうしてゴールを最短距離で行こうとするんだろう。なぜ結果ばかり求めちゃうんだろう。そもそも私はどこに行きたいんだろう、ゴールってどこだろう、とか、再びぐるぐる考え始めつつ、今日は時間的に余裕がないことを思い出して再び歩き始めます。

しばらくアスファルトの道路沿いを出て歩いて行くと、今度は右に折れましょうという標識が。


kitanemuro_ranch_way64

そしてまた、自分の来し方を振り返ります。歩いて来た道は木々に覆われて見えません。

kitanemuro_ranch_way112

よく歩いて来たなぁと思うと同時に、今自分はどこにいるんだろう、今、山の中で倒れても、誰も気付かないだろうな、なんて、やっぱり不安になります。

人生も、いつも不安です。自分は間違っていないのか不安です。正解なんてないのに、歩いているところが自分の道なのに。

誰も私がここにいることを知らない・・・ともちゃん(華原朋美)の、Love Braceをふと思い出す。

「タクシーを拾い 行き先 告げて目を閉じ 私の存在は この国で 誰も知らない」

いや、夫のバッハ君と佐伯さんは、ここら辺に櫻田がいることを知ってくれてるだろう・・・気をとりなおして鼻歌を歌いながら、とぼとぼと山道を入って行きます。

遠くにひょっこりモアン山が頭を出してました。近いようで遠いようで。そして、そこに辿り着くには、一峰超えなきゃいけないのか。


kitanemuro_ranch_way97

少し何かに挑むような感じがして、再び自分がドライブされます。ウソでも何でも常に何かに向って頑張っていたい自分の性格を思い出しつつ、Carry on Carry on〜と鼻歌を歌いながら、山道をずんずんと入って行きます。

#最初に買ったレコードは渡辺美里でカセットテープが伸びる程聞いたので、小室さんの曲は好きなのです。コードが染み付いてるんだと。それと同じで岡村ちゃんも好き。

再びしーんとした山の中でひとりになります。歩いていると、東京に置いて来たいろんなことをついつい考えてしまい、頭の中が忙しくて、まるでしつこく追いかけて来た「あぶ」のようにうざったい。

振り払うように、右、左、右、左、右、左・・・ひたすら足を前に運ぶ。ずーっと登り坂ばかり。身体が極度に疲れて来ると、考えごともできなくなってきて、それはそれで都合がいい。

道の脇のリンドウが鮮やか。反対色に近い黄色い花が、誰が寄せ植えしたワケでもないのに、まるでお互いを引き立てるように咲いているのは偶然なのか。

kitanemuro_ranch_way98

 

結構本格的に山登りです。これは山下りですが。チェロを弾いている時のように、他のことが何も考えられなくなります。考えていると滑って落ち、笑ってくれる人も助けてくれる人もいませんから致命的です。


kitanemuro_ranch_way99

川沿いに少し歩きます。


kitanemuro_ranch_way100

恐らくだいぶ前に設置された時は鮮やかなえんじ色であったであろう木材。この道のメンテナンスは、本当に、本当に大変だと思います。

・北根室ランチウェイ支援はこちらから
おじさんたちが拓いた北海道の歩くための道70km「北根室ランチウェイ」を未来に(2017年3月30日まで)

で、この水路を越えた辺りから、もの凄い上りが続きます。この等高線の密具合、ヤバイっしょ。

kitanemuro_ranch_way113

もう、この写真がどこらへんだったのか、よく覚えていないし、上り坂がツラ過ぎて、写真を撮る余裕をなくしていました。地図を読む能力もあまりないし、iPhoneは電源の事情もあってオフしてたし、どこまでこの坂道が続くのか(そりゃぁ、地図を見れば目星はつくのですが、そんな余裕ももはやなくて)分からず、ひたすら足を前に出して、身体を次の等高線に持ち上げて行くだけで精一杯。それが延々と続いていく・・・


kitanemuro_ranch_way104

そして、この写真の道に横たわる何か・・・が、もう、ヘビにしか見えなくて、「きゃーーーっ!」と叫んで泣きそうになりながら走って戻り・・・で、もうどっかにいったはずと泣きべそかきながら戻ったらまだ同じ所にいて、おかしいなと思ったら根っこだったっていう・・・。グリム童話で森がお化けに見える現象。

泣いても、叫んでも、大笑いしても、ひとり。

今度は下り。前だけというか、自分の足しか見てなかったけど、随分高いところまで来たんだなぁ、とつぶやいてもひとり。


kitanemuro_ranch_way105

歩いてもひとり。止まってもひとり。この道で合ってるのかな・・とつぶやいてもひとり、咳をしてもひとり。ほんとーに、ひとり。圧倒的な孤独感から、自然に飲み込まれていくような、何か感覚がおかしくなってくる。

自分の存在が消えていくような感じがして、怖くなって来てしまって、登り坂なのに、体力も限界に近いのに、走ってもどうしようもないのに、走り出してしまいました

でも、だんだんそんな「ひとりで不安」な気持ちが麻痺して来るというか、疲れ過ぎておかしくなっているのか、飲み込まれるというより、自然に溶け込んで包まれていくような、そんな不思議な感覚になりました。

余計なことを一切考えず(考えられず)「足を右左と前に出すこと」だけに集中していると、次第に歩くことからも意識が遠のき、歩いている自分がそこにあるだけ・・・

一種の瞑想、トランス状態に。

ちょっとランナーズハイに近い感じもしました。無理に走ったので疲れも限界を越え、それを身体が察知して、脳がオピオイドという物質(麻薬みたいなもので苦痛を麻痺させるホルモンらしい)を出していたのかもしれない。(足をくじくかもしれないので、良い子は真似しないで下さい)

幸福感を伴うぼーっとした感じで、何でもできる気がして来ました。

よし、できるだけ遠くまで行ってやろう。そんな気持ちで歩いて行くと、一山越えてなだらかな道に入ります。なんだか気持ち良くてさっさと早歩き。

しかし、そんなハイテンションに歩く櫻田に、身体が訴えて来ました・・・・ぐぅ〜。。。そういえばお腹空いてたわ。

持って来たパンを食べたいのに、一休みできそうな場所もない。仕方なく細い道にそのまましゃがみこんで、遠くにいるホルスタインを微妙に警戒しながらパンを食べました。

(いや、そんな好戦的な家畜じゃないんですよ。でも、万が一ウシ対櫻田の一騎打ちになったら勝てる気がしないし、いや、彼らの愛情表現が櫻田にとって好ましいものかも分からず・・・)

パンを食べてもひとり。ひとりだけど、パンはとても美味しいし、私は生きているしと、良く分からない、基本的な幸せに満たされました。


kitanemuro_ranch_way101

もちろん、そこはかとない不安は常にあるのですが、そもそも、生きているといつだって何かちょっとは不安なものだろう。。これでいいのか不安に思いながら、後ろを振り返りながらも、鼻歌歌って自分を鼓舞しながら前に進むしかないじゃん、となんとなく思って。

そういえば、なんでここに歩きに来たんだっけ。

日頃散歩くらいしかしない櫻田が、トレッキンググッズ一式を揃えに行った時のことです。いろいろ相談して仲良くなった店員さんに聞かれました。

店員:なぜ北海道へ歩きに?

櫻田:北根室ランチウェイの存在を知った時、理由もなく、でもきっぱりと行きたくなったんです。

店員:きっと今、歩くことが必要なんですよ。そういうの、大切だと思います。

って言って下さったことがすごく印象に残っていて、あぁ、こういうことだったんだって腑に落ちました。

ここへ歩きに来るのは、健康のためだったり、トレイルウォークが好きだったり、いろいろ目的があると思いますが、中には、ここではないどこかへ行きたかったり、自分探しだったり、ちょっと人生に疲れたり、何かに駆られて歩きに行く方もいるだろうし、今まさに、そんなことを考えている方だっていると思う。

わざわざ北海道に行ったって、どこを歩いたって、探したって、自分の外に答えは無いけれど、でも、もし、なんとなく歩いてみたいなと思ったら、是非、行ってみて下さい。永遠のモラトリアムも中二病も、大らかに受けとめてくれます。

kitanemuro_ranch_way114

雄大な自然の中をひとり歩き、広大な空間にぽつんとしたり、ホルスタインに見つめられているうちに、過去未来から切り離されて、物理的にもどんどんひとりになる。そうすると、今ここにいる「何もない自分」を強く感じて不安になる。でも、何もない自分だからこそ、そもそも失うものなんて何もないんだと思えてきて、日頃のこだわりや執着から解き放たれる。そして、北海道の大地に身を委ねて佐伯さんの美味しいパンを食べていると、おだやかに力が涌いて来る・・・そんなかけがえの無い経験を頂きました。

感じることは人それぞれだと思います。答えが見つかるわけじゃないけれど、なんか、不思議な力が涌くよ。何せ北海道は大きいからね。

パンを食べた後はしばらくごろんと寝転がって、開放されながら満ち足りていく心を、存分に味わいました。

「できるまで遠くまで行く必要はないし、まあ、ここら辺でぼちぼち帰るとするか。」

そんな、肩の力が抜けた自分と共に、その日は佐伯農場まで戻り、30km歩いた心地よい疲れと共に、穏やかで幸せな夜を過ごしました。

佐伯さん、こんな素敵な道を作って下さってありがとうございます。

そして、まだ続く・・・。

北根室ランチウェイを女一人で歩く

1★北海道東にある71.4kmの歩道を歩きたい!
2★民宿地平線は親戚の家のようなあたたかさで
3★民宿地平線〜開陽台の先
4★佐伯農場到着!
5★ずっといたかった佐伯農場
6★佐伯農場〜養老牛温泉
7★養老牛温泉〜モアン山
8★モアン山〜中標津交通センター

北根室ランチウェイオフィシャルサイト

・北根室ランチウェイ支援のサイト(プロジェクトは終了しています)
おじさんたちが拓いた北海道の歩くための道70km「北根室ランチウェイ」を未来に

KIRAWAYを応援する会★グッズ到着にランチウェイの記憶が蘇る

 

タイトルとURLをコピーしました