月別アーカイブ: 2014年3月

「鏡子の家」三島由紀夫★甘美なデカダンスに酔う

学生の頃に、たまには日本の文学でも読むかなと思って、
自宅の母の本棚で見つけたのがこの三島由紀夫の「鏡子の家」
500ページ以上ありましたが、数日間で一気に読んでしまいました。

mishimakyoko2 もう、日に焼けて、汚れて、シミが付き・・・愛おしい本に仕上がってます。

そう、今の本は文字が大きいので、660ページだそうです。
母の時代、櫻田が小さかった頃は文字が小さかったですよね。新聞も本も。


何がよかったって、19歳の大学生にはただただカッコよく、
美しく、クールで、洒脱で、あぁ、カッコ良かったのです(笑)
朝鮮戦後の不思議な時代感、教科書の中の歴史でもなく、今でもなく、新鮮で。
なんだか小難しいことに憧れる10代最後の、あの時の自分に会える本です。

退廃的で、享楽的、そして不道徳な、バツイチ鏡子のサロンに集う若者たち。
まあなんと甘やかで魅力的な響きなんでしょう!
櫻田の知らない世界が、そこに暑苦しくもったいつけて展開され、
耽美な三島由紀夫ワールドへ引き込まれました。



鏡子の家に集まる、男性4人の人生絵巻なのですが、
神秘宗教、右翼、格闘技、情死・・・てんこ盛りで、
三島由紀夫自身が持つ、ストイシズム、ナルシズムの見本市状態。

清一郎:貿易会社のエリート社員だが、世界の破滅を信じる
俊吉:ボクサーでチャンピオンになるも致命的なケガをして右翼へ
夏雄:神秘宗教にハマり死の境まで行くが生還する童貞の画家
収:売れないナルシスト美俳優、醜い高利貸しの女と情死する

人生上がったり下がったり命を落としたりするその4人の人生は、
ほとんど交わることなく平行線上に進み、
さらに、鏡子も彼らに深く関わらない。
他人の生を「鏡」のように映し出すだけ・・

孤独な時代に生きる方向性を見失った若者たち・・とでも表現できるでしょうか。

■ たいへん甘美な響きを放つ言葉達

登場人物が放つダイアログ一つ一つが面白い。それがこの本の魅力。
自己陶酔するかのように、客観的に、悲観的に、自虐的に。
「ひねくれ箴言集」とでも。

藤 子は恋愛を心理的なものと見做していた。心理的なものは黴のようにどこにでも生えるならいで、許婚同士のあいだに生えたってふしぎはなかった。彼女はとき どき許婚の顔をのぞき、この野心家の青年の心が黴でいっぱいのところを想像した。つまり、清一郎の目に不安を読みたかったのだ。

自分は違う、分かってるって思いたい。その場を支配したい、上に立ちたい、見栄っ張りで臆病で。

愛し合っていないということは何と幸福だろう。何て家庭的な温かみのある事態だろう。

逆説的だけれど、愛の持つ危うさ、欺瞞を表現し。

通例、愛されない人間が、自ら進んで、ますます愛されない人間になろうとするのには、至当の理由がある。それは自分が愛されない根本原因から、できるだけ遠くまで逃げようとするのである。

ぐさーーーーーーっっ、えぇ、櫻田のことですけど何か。

再び真面目な時代が来る。大真面目の、優等生たちの、点取り虫たちの陰惨な時代。再び世界に対する全幅的な同意。人間だの、愛だの、希望だの、理想だの、・・・これらのがらくたな諸々の価値の復活。徹底的な改宗。

鏡子と清一郎が最も嫌うものの羅列。
そして時代は移り変わり、大真面目な時代に飲み込まれて行く・・・

高校生まで真面目な優等生で点取り虫だったこずえちゃんは、
背筋がぞっとするような興奮を覚えたのでした。

いやらしい、ねっとりとした美しい倦怠が、己惚れが、美しく展開されます。恍惚。

■ 自分の感性に何かと引っかかって来る本

三島由紀夫の作品は何冊か読んでいますが、
おぉ、文学的だわっ!的にずしっと来るもの、金閣寺とか、と、
流行作家ですわな、的にさらさらと読めて愉しいものがありますが、
これは後者かなと思います。

しかし、人生に影響を与えた本トップ5に入る本です。
タイミングという意味もあるかもしれません。
19歳の青臭さがこの作品をバイブルたらしめたのだと。



4人は知り合いではあるけれど、あまり深く関わったり影響し合ったりしない。
そんな、平行線状に進む物語の形式を「メリーゴーラウンド形式」と呼ぶらしい。
で、確か、辻仁成のワイルドフラワーという本を読んでいて、
この鏡子の家と同じ形式だとか、本人が言ったか、誰かが言ったか・・・書いてあったかして、
あぁ、好きなものが繋がったニヤリ的、愉快な驚きを頂きました。

辻さんのも好きですが、少し描写が重かったような記憶が。
もっともっと、軽く、軽妙に、洒脱に、しかし深く陰を落としたような、
鏡子の家は素晴らし過ぎる。



また、ミランクンデラにハマっていた時期でもあり、
「死の決して繰り返されぬ性質」という表現が、
存在の耐えられない軽さ冒頭と無理やりシンクロされ、
これまた好きなものが繋がったニヤリ、でした。



学生時代の櫻田は、よっぽど青年的な苦悩に没頭していたのだと思います、
甘やかに、しかし大真面目に。

そう、こずえさん、今も昔もナルシスト!

「疲れすぎて眠れぬ夜のために」内田樹☆構造主義に触れる

30歳位かな、本屋さんでふと手に取ってしまったこの本。
仕事に恋に突っ走っていたアラサーのこずえさん、
きっといろいろとつらくて眠れない夜が続いていたのでしょう。

しかし、そのおかげで内田樹先生に出会うことができました♪
一時期新刊が出ると買って読んでいましたし、
先生が傾倒している古武道をかじってみたりしました(1日だけ)



その内田先生の本の中でも、この本が一番好きで、
いいなと思うところを折ってたら、厚さが2倍くらいになってます(笑)
tatsurunemurenai2

自分が頑張り過ぎていると感じた時、スローダウンするために手に取る本です。
なぜスローダウンする必要があるのか?

人間はわりと簡単に壊れる
~心耳を澄ます~

からです。
高すぎる目標設定、極度のプレッシャー、不快な人間関係。
そんな日々で本当に壊れてしまう前に、
目標設定を下げ、プレッシャーを避けて、不快な人間関係から逃げるために。

疲れたら、正直に「ああ、へばった」と言って、手を抜くということは、生きるためにはとてもたいせつなのです。-中略-
でも、「一ランク上の自分」に取り憑かれた人は、身体や精神が悲鳴をあげるまで痛んでも、なかなか休みません。疲れて立ち止まると、そういう弱い自分を責めます。-中略-
向上心は確かにある方がいい。でも、あり過ぎてはいけない。

~ワンランク下の自分に~

なぜ向上心があり過ぎてはいけないのか、
なぜ無理したり我慢しちゃいけないのか、
向上心、無理、我慢の構造を分かりやすい例を交え、軽妙に説明されます。

頑張り過ぎ、スローダウンしろ!と言われてもなかなかできません。
それは、自分は怠け者じゃない!的なおかしなプライドや、
怠けたら自分はダメになっちゃうんじゃないかという恐怖やらあるから。

でも、内田先生の解説を読んでいると、
頑張り過ぎることそれ自体が、合理的ではないことに気づかされます。
だから、自分を甘やかしてしまうんだ、と思わずに、
合理的な判断として、怠ける自分を許すことができる。

さらに無駄に「頑張り過ぎる」思考体系を揺るがすので、再発も防止します(笑)

君たちにはほとんど無限の可能性がある。でも、可能性はそれほど無限ではない。
ぼくたちの可能性を殺すものがいるとすれば、それはほかの誰でもありません。その可能性にあまりに多くの期待を寄せるぼくたち自身なのです。
~心耳を澄ます~

自分の可能性をつぶしちゃいけない。だから、スローダウンするんだ、櫻田!



櫻田が「構造主義」という考え方に出会ったのは、この本です。
#この本には「構造主義」という言葉は出て来ません。

私たちはつねにある時代、ある地域、ある社会集団に属しており、その条件が私たちのものの見方、感じ方、考え方を基本的なところで決定している。-中略-
むしろ私たちはほとんどの場合、自分の属する社会集団が受け容れたものだけを選択的に「見せられ」「感じさせられ」「考えさせられている」

Wikipedia:構造主義
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E6%A7%8B%E9%80%A0%E4%B8%BB%E7%BE%A9

構造主義的に考えると、

人間というのは、オリジナリティのない生き物なのです。
~家族を愛するとは~

「ほんとうに私が欲望しているもの」なんて存在しない。
人間の欲望は本質的に他人の欲望を模倣するものです。

〜家族を愛するとは〜

ふむふむ。ふーん。←分かっているような分かっていないような。

「ほんとうの自分」というのがまるっきりの「作り話」だからです。
~「らしく」生きる~

「ここにいる私はほんとうの私じゃない!」
とか言って一人旅に出ることのアホらしさ←出た事がある(汗) を説明され、
変な方向に凝り固まっていた自分を恥ずか懐かしく思い出したり。

その他いくつか気になった言葉を。



礼節というのは、まさに「生き延びるための智慧」なのです。
〜「らしく」生きる〜

「品」というのは、要するに、「らしさ」の内側にあえて踏みとどまる節度のことです。
〜「らしく」生きる〜

不快な人間とかかわると、ちょうど可聴音域を超える低周波が睡眠を妨害するように、恒常的な不快感が「ボディーブロー」のようにゆっくりと効いてきます。そして、精神と身体がだんだん損なわれてゆきます。
〜心耳を澄ます〜

嫌な人からは堂々と逃げればいいんだ!

相手が自分のことをどれほど愛しているのかを知ろうとして、愛情を「試す」人がいます。愛情は「試す」ものではありません。「育てる」ものです。
〜心耳を澄ます〜



櫻田は村上春樹を読まないのですが、
この本に引用されたこの言葉は櫻田の人生にとても大きな影響を与えました。

 小さくても確実な幸福@村上春樹 

これを一つ一つ積み重ねていくことこそ、幸せになるための最良の道。
誰でも知っていることだけど、明快に分かりやすく表現されていて、好きな言葉です。



眠れない夜に読み出せば、
知的好奇心が刺激されてさらに眠れなくなること請け合い!